イギリスGuardian誌から。「自閉症患者が動物と会話できるようになる」という記事に続き、自閉症患者がどうして動物の行動を解読できるようになるかについて解説している。(本からの抜粋:An extract from Animals in Translation: Using the mysteries of autism to decode animal behaviour by Temple Grandin and Catherine Johnson)。
Stuck with a world in bits and pieces
●自閉症者は物事を細かく分けようとする傾向がある。つまり、物事の類似性よりも差異性に注目する傾向がある。これは動物の行動パターンと類似している。
●盲導犬を訓練するとき、その盲導犬がある交差点をわたることを覚えられたからといって、別の交差点もわたれるわけではない。盲導犬はさまざまなパターンを学習する。しかし、個々の命令を別の時間・環境・人に一般化することはできない。
●自閉症者を教育する人は、まったく同じ問題に直面する場合がある。ある行動学者は、トーストにバターを塗ることを覚えた子どもが、トーストにピーナッツバターを塗ることができなかったと報告している。
●だからといって、動物や自閉症者が「行動を一般化する能力に欠けている」ことを示しているわけではない。むしろ、動物や自閉症者が行っている一般化はたいていの場合、自閉症でない者に比べて狭く、特殊なだけである。
●自閉症者の能力は、いくつかの研究の結果から「隠れた形を読む能力」と呼ぶことができる。
●1983年ShahとFrithは、自閉症の子ども、普通の子ども、学習障害の子ども各20人を対象にして、最初に子どもにある図形をみせたのち、ある物体を描いた絵の中に同じ図形をみつけることができるかどうかをテストした。すると、自閉症の子どもの平均正解率は25問中21問、対して普通の子どもと学習障害のある子どもでは15問だった。つまり、普通の人は自閉症者に比べて、隠された形を見つける能力が劣っているといえると思われるのだ。
●ただし、世のほとんどの人は、こうした「隠れた形を見つける能力」がどれほどの価値があるかをわかっていない。メリーランドにある自閉症者に仕事を紹介する派遣会社では、Tシャツ工場でシルクスクリーンで印刷した製品のかすかな汚れを検査するグループを編成している。もちろん、自閉症でない者にその汚れを発見することはできない。
●動物の才能、たとえば鳥であればたった一回飛んだだけで飛行ルートを覚えるといった才能は、自閉症者がもつ才能と同じものではないだろうか。自閉症者は暗算を圧倒的なスピードで行ったり、記憶からほぼ完璧なスケッチをする。SnyderとMitchellは、こうした自閉症者の能力は、彼らが五感からの情報を一般人が行うのとは別のプロセスで処理しているからではないかと推測している。
●一般人はある1つのビルを見ると、脳はビルを構成する何百何千という部分を1つの全体(ビル)へと組み立てる作業を、自動的に行っている。
●自閉症者の能力は、(全体を)構成する部分や要素に気づきやすいということである。これが、彼らがどのように描くのかを教えられることなく、遠近画法を使いこなせるようになる理由ではないだろうか。彼らは、彼らが見たように描いているだけで、これに対して一般人が絵を描くというのは、たとえば犬の絵は犬を描いているのではなく、犬の概念を描いているにすぎない。自閉症者は、普通の人よりも、より直接的かつ正確に世界を経験しているのである。
●自閉症者と動物の能力の類似性を、器質的に明らかにするような研究もある。まず、自閉症者では脳の前頭葉および側頭葉のどちらもうまく機能していないのだが、動物の脳と人間の脳でもっとも大きく違うところは、動物の前頭葉は人間の前頭葉よりも小さく、未発達であることである。
●自閉症でない人にとって、あるランドマークは同じように向こうからやってきたり、行き過ぎたりするものである。つまり、普通の人は誰かの家にいく途中で大きな赤い小屋を見たら、帰り道にも同じ大きな赤い小屋を見る。別の角度から見ても、彼はそれをまったく同じものと見る。
●このことは、普通の人の神経システムが多くの細部を切り捨てて、彼が見たいと期待するもので空白を塗りつぶしていることを意味する。逆に自閉症者にとっては、同じ物体の別の側面は、まったく別物に見えているのである。
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